今回ご紹介するのはモダンでラグジュアリーな住宅へと甦らせたリノベーション。それはロンドンを拠点に活動する建築家MzoTarrArchitectsによって手がけられました。この住宅は以前三人の建築家が失敗に終わっていたという物件。建てられた当時のものも含め少なくとも四つの異なる建築スタイルが混ざり合っています。それを踏まえ行われたリノベーションで、地熱を利用したエコな暖房や雨水利用、外壁には構造断熱パネルを使用するなどエコフレンドリーで省エネにもつながる様々なシステムが採用され、最終的には五つのベッドルームを持つ四階建ての住居へと生まれ変わったのです。さっそく見ていきましょう。
壮観な印象を見る人に与えるこちらが住宅の全景。多くの異なる時代や建築スタイルの融合を見ることができます。伝統的な三角屋根の形状は生かしつつ更にミニマルに、モダンな出窓を持つボリュームと杉材が印象的な木造建築部分を大胆に組み合わせ、そしてその下部に見えるのはガラスの壁とエントランス… 。写真左手に並んでいるイギリスの伝統的スタイルの住居とは一線を画していることが一見して分かると思います。出窓や三角屋根など建物を構成する要素は伝統的スタイルを踏まえていますが全てが現代流にアレンジされています。
こちらは芝生の庭を備えた住宅の裏手です。細長い木材パネルで構成された豊かで温かな表情を持つボリューム、そして対照的にモダンでスタイリッシュな印象の白いボリューム。滑らかな黒い大きな窓枠がアクセントとなり全体を引き締めています。北向きですが大きく取られた開口部で自然光が入るよう設計されています。
こちらもこの家が持つ印象的なシーンのひとつ。訪れるゲストを迎える水盤とガラスの壁の向こうに見えるまるで浮いているかの様な階段です。水盤に映るその姿は一種幻想的で誰もが目を奪われる美しいアイキャッチとして機能しており、建物内部への興味を抱かせます。階段という至って普遍的で実用的な要素をこのように住宅のアイキャッチとして利用・演出するというセンス、参考にしたいですね。
こちらは住宅内部のフロアプランです。図を見るとこの家が仕切りの少ない開放的な間取りであること、先述した水盤と一階部分がどのような関係であるかなどが分かると思います。現物では見えづらい各部屋の位置関係や動線などはこうした図で確認するとクライアント側も理解がしやすいのではないでしょうか。
最後に内部空間を一点紹介します。こちらは一切の無駄を削ぎ落としたミニマルスタイルのキッチン。オフホワイトのインテリアと柔らかい光の照明でミニマルでありながらどこか温かみも感じるキッチンです。フロアプランからも分かるように最小限の仕切りで構成された内部はフレキシブルなアクセスが可能、そして家族といつでもコミュニケーションを取ることができる、オープンでありつつ強固なつながりを生み出す設計となっています。