ストイックなまでに装飾を削ぎ落としたコンクリートの住宅。その自然なマテリアルは熟練の職人の手によって時と共に味わいを増していく堅固な立体を形成します。コンクリートのクールな印象を和らげるのは手仕事で生産される真鍮の金物たち。思わず触れたくなるような質感とデザインが際出つ住宅です。
手がけたのは建築家自ら現場での作業を担うTOMOAKI UNO ARCHITECTS。傾斜地に計画されたこの住宅は機能ごとに分けた3つのボリュームを斜面に沿って配置しています。すでに一般的になった打ち放しコンクリートのミニマルな外観は、時と共に風合いを増していき常にプリミティブな美しさを見せてくれます。「静寂が広がるタイムレスな住まい」も時を越えて美しさを持続するRC造の住宅です。是非ご覧ください。
平屋建てのような佇まいに見える最上階に設けたエントランスです。風化したようなオジリナルの鉄製のインターホンやポストなどが印象的ですね。無機質に見えながらも自然と共存していることを教えてくれるような素材を手作業で仕上げて作った住宅です。真っ直ぐに伸びるコンクリート仕上げのアプローチを進むと庇のかかった玄関ドアに辿りつきます。その前には水盤が張ってあり、自然の移ろいが優しく出迎えてくれる趣きのあるデザインを採用しています。
最上階のエントランスから地中に入っていくような感じを思わせるポエティックな移動空間です。唯一円形のトップライトから差し込む神々しささえ漂う光が、コンクリートの表面を浮かび上がらせています。
偶発的に生じるコンクリートの表層が視覚と触覚に訴えてくるようです。細やかに施工された階段も目を見張るものがありますよね。丁寧に作られた機能美溢れる真鍮の手摺はもちろんオリジナル。 グレーの空間に際立っています。
天井も床もコンクリートで囲まれたこの空間は中間階にあるLDKです。大きめの開口が外の自然の風景を切り取り、天井の高いストイックな室内にナチュラルで温かみのある雰囲気を添えています。木のドアの向こうは最上階のエントランスと繋がる内階段。コンクリートと相性の良い木の素材を組み合わせると温かみのある雰囲気が出るので是非参考にしたいですよね。
プライバシーに配慮したデザインから開口が少なめですが、キッチンの上部にはトップライトを設け採光を確保。ワークトップはコンクリート、扉や引き出しにアメリカンブラックチェリーの木を用いたオリジナリティ溢れるキッチンです。背の高いたっぷりとした収納スペースも使いやすそうですよね。上部を開かせた一体感のあるデザインによってダイニングやリビングゾーンと緩やかに繋がり、光や風が行き渡るような空間になっています。ワークトップ上の棚にも手仕事で仕上げた真鍮を採用。
LDKと同階には水廻り空間も配置しています。こちらもオールコンクリートで仕上げており、置き型のバスタブや真鍮のサッシやドア枠などが際立つスタイリッシュなバスルームです。床から天井までの大きな開口からはプライベートなパティオに出られるので入浴後に涼んだりできるのがいいですよね。外部空間と融合することでさらに開放感も感じられます。
最下階には寝室や個室等プライベートな空間を配置。こちらは温かみのあるウッドフロアを採用。さらに廊下一面にかなりの収納力を持つ棚を造作で設けています。メリハリのある空間構成とシンプルなのにスタイリッシュなデザインが魅力的な住まい、皆さんの家づくりの参考になりましたか?